壊れないように、と離れていく君を僕は

私は一度死んだことがあります。
身体ではなく、心が。
一番信じてた人に全てを否定され、何も無い闇の中に一人置き去りにされて。
そうしてその人に殺されました。


辛かった。

何も無い世界。
周りを見ても、振り返っても、先を見ても、続くのはただ痛い程静かな闇が広がるだけ。
誰もいない世界。
私がここに存在するということを証明するものは何もなくて。
風さえ吹かない世界。
触れることも触れられることも。
自分が生きているかどうかもわからないそれは静かな。
冷たい場所。
そんな所に私はいた。


救ってくれたのは。

何の力もない、けれど真っ直ぐな目を持った。
同い年の男の子。
彼だけが、真っ暗な私の心に入ることができた。
入ろうとしてくれた。


全て、彼が教えてくれた。
全て、彼が与えてくれた。


愛されるという幸せ。
人を愛するという幸せ。
温もりをわかちあう事の幸せ。

全部。彼が。


愛してた。

私の全て。
一度死んだ私を、再びこの世に戻したのは彼。
今の私を形作った大切な人。
私の神様。

だけど。

いつか、そう遠くない未来に私は。
きっとその人を傷つける。
縛って、私だけを見てくれるように。
その人の自由を奪い、殺してしまう気がした。

私の大切な人。
唯一私が失いたくなかった人。
殺したいほどに、愛した人。

だから、離した。

一番大切な人を、この手で傷つける前に。
彼の記憶の中の私が、汚れて醜くなる前に。
私が、私でなくなる前に。


今。


ふと思うのは彼のこと。

失うことを恐れ。
またいつかあの闇に戻ることに脅え。
『始まらなければ終わりも有り得ない』と、
求めることを止め、芽生えた瞬間にそれを捨て。
そうして生きている。

もう戻りたくない。
あの冷たい場所に、戻りたくない。
今度戻ることがあればその時は。
私は本当に死んでしまう。
だから。
私はもう、何も求めない。

ねぇ、そんな私を。
あなたはどう思う?


これから先も、私は一人で生きていく。
人はそれを笑うだろう。
傷つくことを恐れ、誰も求めない私を。
ならば、私は問う。
私の闇を、理解し救ってくれる人が果たしているのか、と。
その手を離せば私は死ぬ。
そんな重荷を背負って、それでも。
真に私を必要としてくれる人が。
この世に存在しているのか、と。

私が欲しいのは同情じゃない。
私が欲しいのは。
私を頼り、私を必要としてくれる人。
私が頼れ、私が必要とする人。
甘え、甘えられ、泣いて、泣かれて。
全てを曝け出せる人。
私の闇、弱さ、醜さ、その全てを。
理解してそれでも尚。
それでも傍にいてほしいと、願ってくれる誰か。


私の神様。