深夜に現る魔の使い


やられました。


一息つけて。

ひょんなことから去年発売されたというマザー2のキャラクター、どせいさんぬいぐるみの存在を知り、可愛いもの大好きな私は早速ネット界を彷徨い漁り続けていた。
と、そんな時にたまたまたつけっぱなしのテレビに何気なく目をやると、そこには肥満に悩む男女四人が一ヶ月で劇的に痩せたと喜びの声を上げるサマが見れた。むむ、興味深い。私はどこもかしこも"SOLDOUT”の文字で彩られたどせいさんをシャットダウンし、テレビに見入った。



『まさかこんなに減ってるなんて!うわ〜嬉しい!』
『えっ、そんな、こんなに?!』
『一ヶ月でウエストがマイナス十四センチだなんて!!』



語尾に"!"マークを多用している彼等を鼻で笑ってやった。フン、たかだか一ヶ月でそんなに痩せるものか。腹をよく見せてみろ。あんたら実はホルンやチューバ奏者で肺活量が凄いだけなんじゃないの。一ヶ月前と表示された画像の時は思いっきり腹式呼吸をして腹を膨らませていただけなのだ。そうに違いない。
数々のダイエットを試み、ことごとく敗れ去った私は結構に長寿だと思われる深夜のテレビショッピング番組を見ながらそう毒づいていた。

しかし。


『メーカーはなんとあの有名な○○!!(某有名会社)信頼できます』


!!


なんと。私がバカにしていたその商品は、誰でも知っているであろう有名会社だったのだ。今まで失敗してきたよくわからない会社名のくせにバカ高い商品とはわけが違う。私の心は急速に傾いていった。


『一日一回、食事かわりに飲むだけ!あとは間食を控えてバランスの良い食事をするだけです!』


その"バランスの良い食事"が難しいんじゃないか、と多少の文句はあったものの、その商品は私の目には酷く魅力的に見えた。なんたって先日マイクロダイエットをしようか迷い、結局あまりの出費に泣く泣く断念したところなのだ。これが惹かれずにいられ…って、アレ…?


…ん?出費??


私ははたと気付いた。


そうだ。私がマイクロダイエットを諦めたのはその値段の高さが原因だったからだ。受験生のコンビニアルバイターには痛すぎるほどの出費。そのマイクロダイエットと似た感じの商品が、安いわけがなうではないか。フフ、夜の魔力に危うく騙されるところだった。そんな手、私に通じるはずが…



『なんとお値段は9000円!二か月分で9000円です!!』



買ったーーーーっっ!!!!